下肢 整形外科疾患 足関節外側靭帯損傷

足関節外側靭帯損傷:足関節捻挫の代表例

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1日に1万人に1人割合で発生すると言われいている、足首(足関節)の捻挫。その多くに足関節外側靭帯損傷が起こります。

運動やスポーツを楽しんでいる方から、この足関節外側靭帯損傷は、診断よりも治療方針や競技復帰そしてその後の予防について詳しく知りたいという相談を良く受けます。

今回はその点について重点的にお話をいたします。

(今回も、日本整形外科学会のサイト"外側靭帯損傷"を参考にしております。合わせてご覧ください。)

今回の10秒まとめ。

① 足関節外側靭帯には、前距腓靭帯・後距腓骨靭帯・踵腓靭帯の3つの靭帯がある。

② 損傷が起こりやすい靭帯は、前距腓靭帯と踵腓靭帯の2つ。

③ 足関節周囲には距腿関節(狭い意味での足関節)と距踵関節の2つの関節がある。

④ 距腿関節は足関節運動の伸展・屈曲に主に関与し、距踵関節は足関節運動の内返し・外返しに主に関与する。

⑤ 靭帯損傷の程度によって初期の固定期間は異なるが、初期の固定が愁訴の低減に繋がる。

⑥ 可能な限り受傷早期からリハビリを開始することが、長期の愁訴低減に繋がる。

足関節外側靭帯損傷とは?

3つの足関節外側靭帯

足関節の外側には腓骨(外くるぶし)と距骨(足関節の根元の骨)を繋ぐ①前距腓靭帯と②後距腓骨靭帯、そして、腓骨(外くるぶし)と踵骨(かかとの骨)を繋ぐ③踵腓靭帯の3つの靭帯があります。

足関節の構造上、足関節を伸展させる(足首を伸ばす)と足部は自然と内返し(足の裏が体の内側に向く)になります。

よって、足関節が強制的に伸展(伸ばされる)されると、足部が内返しになるため足関節の外側靭帯が引き延ばされ、これが足関節外側靭帯損傷の原因となります。

外側靭帯損傷の発生頻度が高い理由の一つに、足関節は屈曲よりも伸展しやすい構造になっているため(足関節の根元にある距骨の関節面は、足関節面前方が大きく後方が小さくなっており、屈曲時は前方の関節面が足関節に嵌り制限されやすい構造になっている)、足関節が過伸展しやすいことが挙げられます。

足関節には2つの関節が存在する。

先ほどもお話したように、足関節はその動きによって「伸展・内返し」と「屈曲・外返し」のように2つの運動が同時に起こる関節であり、2つの関節の運動が関わっています。

2つの関節とは、距腿関節(狭い意味での足関節)と距踵関節のことです。

距腿関節は、距骨・脛骨・腓骨の3つの骨で作られ、足関節運動の伸展・屈曲に大きく関与しています。

距踵関節は、距骨と踵骨の2つで作られ、足関節運動の内返し・外返しに大きく関与しています。

前距腓靭帯と後距腓骨靭帯は距腿関節の安定に大きく関わっており、踵腓靭帯は距踵関節の安定に関わっています。

足関節外側靭帯損傷の症状は?

症状

  • 外くるぶし周囲(特に前方の)の腫脹・疼痛・圧痛。
  • 足関節の腫脹及び関節内側・外側の皮下出血。

もっとも損傷しやすい靭帯は前距腓靭帯のため、多くの方で外くるぶしの前方に腫脹や疼痛を認めます。

また、前距腓靭帯は足関節を包む関節包と連続しているため、靭帯損傷によって関節包が破綻すると関節内出血が生じため、足関節全体の腫脹や皮下出血(特に足部外側)を認める場合があります。

足関節外側靭帯損傷の特徴は?

特徴

  • 疼痛の増悪はあるも、歩行困難は稀。

足関節外側靭帯損傷によって足関節の安定性は低下しますが、それによって歩行ができなくなることはありません。疼痛はありますが荷重は可能です。よって、荷重できない場合は、関節面の軟骨損傷や骨折などを疑うべき所見の1つです。

足関節外側靭帯損傷の診断は?

診断

  • 足関節前方引き出しテスト陽性。
  • 足関節内反テスト陽性。
  • ただし徒手検査は症状が落ち着いた時期に行うべき。
  • 正確な損傷靭帯の判断にはMRIやエコー検査を用いる。

足関節外側靭帯は足関節の安定性確保に関わっているため、損傷に伴いその安定性が破綻します。

前距腓靭帯損傷では足関節前方引き出しテストが陽性になり、踵腓靭帯損傷では足関節内反テストが陽性になります。

もちろんこれだけで損傷靭帯を判断するのではなく、エコーやMRIを用いて損傷部位の判断を行います。

また、腫脹・疼痛が強い時期にこれらの徒手検査を行うのは、患者さんに対しての負担が大きいため、徒手検査は症状が落ち着いた時期に行うべきと考えております。

足関節外側靭帯損傷の治療は?

治療に関しては、初期治療とリハビリテーションに分けて考える必要があります。

初期治療

  • 外くるぶし周囲に腫脹・疼痛を認める場合、1週間のシーネ固定+免荷およびRICE処置。
  • 1週間後、腫脹の改善する場合(1度損傷。多くは前距腓靭帯または踵腓靭帯の単独部分損傷)、装具固定に変更。
  • 1週間後、腫脹の改善ない場合(2度損傷。多くは前距腓靭帯または踵腓靭帯の単独完全断裂)、2~3週固定を継続し装具固定に変更。
  • 1週間後、腫脹の改善なく足関節の不安定性が高い場合(3度損傷。前距腓靭帯及び踵腓靭帯損傷の完全断裂)、手術加療を検討。

足関節外側靭帯損傷の患者さんを診察した場合、前距腓靭帯部の腫脹が明らかに乏しく圧痛が軽度の方以外は、1週間のシーネ固定+免荷重およびRICE処置の指示をしております。

RICE処置とは、外傷(怪我)の初期治療をまとめたものです。

R: Rest(患部の安静確保)患部の安静を確保することでさらなる損傷を防ぐことが目的です。

I: Icing(患部の冷却)患部の腫脹を抑制することを目的としています。15分程度の間欠的に患部を冷却します。

C: Compression(患部の圧迫)患部の腫脹予防のために軽度の圧迫を加えます。

E: Elevation(患部の挙上)患部の腫脹予防および軽減のために、理想的には心臓より高い位置に患部を挙上することを心がけます。

また、軽度の捻挫や個人の事情でどうしても固定と免荷重ができない方でも、絆創膏固定とRICE処置は全例に行なっています。その理由は、受傷初期で固定とRICEを怠った場合、愁訴が残る可能性が高いためです。捻挫のように頻度の多い疾患こそ、早期復帰のために適切な初期治療を開始することが必要と考えております。

多くの方々は1週間の固定で症状は改善しますが、靭帯損傷に伴う足関節の不安定性が生じるため、装具もしくは絆創膏固定を4~8週行い、合わせて足関節の安定性確保のためにリハビリテーションを行います。

1週間のシーネ固定+免荷重で腫脹の改善を認めず症状の改善の乏しい場合は、徒手検査による足関節の不安定性の評価やエコーを用いて損傷靭帯の評価を行います。

足関節の不安性が強くない場合は、追加で2~3週間のシーネ固定+免荷重を行い、その後4~8週間の装具固定とリハビリテーションを行います。

足関節の不安定性も強く前距腓靭帯及び踵腓靭帯損傷の完全断裂を認める場合は、手術加療を検討します。

リハビリテーション

  • 目的は早期の活動復帰
  • 受傷早期からの関節可動域訓練開始
  • 内反予防下で関節可動域訓練とアスレチックトレーニング

現在では、可能なかぎり早期から関節可動域訓練を行うことが患部の腫脹を改善させ、腱や神経の癒着を予防しかつ損傷靭帯の修復を早めると考えられております。

そのため、初期1週間の安静確保の後は積極的な関節可動域訓練の開始を指示しています。1度損傷であれば、内反予防のための絆創膏固定もしくは装具固定の上で、足関節の安定性確保のために足部外在筋肉(下腿から足部に伸びる筋肉)トレーニングを開始致します。

2度損傷以上でも、損傷靭帯に負担をかけない範囲(足関節底屈10度・背屈10度)で早期の関節可動域訓練を開始します。固定終了後からは絆創膏固定もしくは装具固定の上で足部外在筋肉(下腿から足部に伸びる筋肉)トレーニングを開始致します。

 

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