外来にて、特に転んだなどの外傷歴がないのに、ものが持つ時や握る時の肘の痛みを主訴に受診される方が多くいらっしゃいます。
そのような時には、上腕骨外側上顆炎を強く疑います。
(今回も日本整形外科学会が発行している「上腕骨外側上顆炎」のパンフレットの図を一部使用しております。ぜひ参照ください。)
今回の10秒まとめ。
① 上腕骨外側上顆とは、上腕骨の遠位(肘側)外側にある骨の出っ張った部分のこと。
② 上腕骨外側上顆には、総指伸筋(EDC)と短橈側手根伸筋(ECRB)の付着部がある。
③ EDCとECRBの付着部に微細な機械的損傷が生じると疼痛が出現する。
④ 30-50歳台の特に女性に多く、ものを持つ時やタオルを絞る時に痛みが出現する。
⑤ 除痛にはステロイドの局所投与が効果的だが、頻回の投与は避ける。
⑥ 長期の疼痛コントロールにはEDCとECRBの付着部の柔軟性獲得が重要である。
上腕骨外側上顆炎とは?
上腕骨外側上顆炎とは、その名の通り「上腕骨外側上顆」に「炎症」が生じている状態を示す疾患名です。
上腕骨とは肩から肘にかけてに存在する骨の名称です。そして上腕骨外側上顆とは、上腕骨の遠位(肘側)外側にある骨の出っ張った部分を指します。
この出っ張りには、指を伸ばす総指伸筋(EDC)という筋肉と手関節を伸ばす短橈側手根伸筋(ECRB)という筋肉の根元が合わさってが付着しています。この付着している部分に微細な外傷が生じることが、炎症が起こる原因と考えられております。
頸椎症性神経根症の症状は?
症状
- 肘関節伸展位でものを持ち上げる時に疼痛が出現する。
- タオルを絞る動作で疼痛が出現する。
多くの場合、安静時の痛みはありませんが、ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。
頸椎症性神経根症の特徴は?
特徴
- 30-50歳台の女性に多い。
- エコーにて、付着部の腱成分を示す高エコー領域の一部が低エコーを示す。
30歳台以降で多く認める疾患であり、女性の方が発症頻度が高いと言われています。
近年ではエコーの描出も繊細になってきており、疼痛部位の筋腱付着部の変性所見やドプラにて炎症所見を認める場合があります。
頸椎症性神経根症の診断は?
診断
- Thomsenテスト陽性。
- Chairテスト陽性。
- 中指伸展テスト陽性。
Thomsenテストとは、患者さんは肘を伸ばしたまま手首手関節を伸ばしてもらい、医師は逆に手関節屈曲させるように負荷をかける検査です。
肘に痛みが出現する場合を陽性と判断します。
Chairテストとは、患者さんに肘を伸ばしたまま椅子を持ち上げてもらう検査です。
肘に痛みが出現する場合を陽性と判断します。
中指伸展テストとは、検者が中指を上から押さえるのに抵抗して、患者さんに肘を伸ばしたまま中指を伸ばしてもらう検査です。
肘に痛みが出現する場合を陽性と判断します。
頸椎症性神経根症の治療は?
治療
- 抗炎症薬の内服や外用やバンドによる固定。
- 局所へのステロイド投与。
- EDCやECRBの上腕骨外側上顆に付着する筋腱成分のストレッチ。
- 肘関節回内運動制限の解除。
まずは、抗炎症薬の内服や外用にて疼痛コントロールを行います。また、バンドなどの固定も有効な場合があります。
除痛には、局所にステロイドの局所投与が有効ですが、腱成分を痛めてしまうため、1週間間隔で3回程度に留めて置くことが推奨されています。
ある程度疼痛の改善を認めたら、肘関節伸展位で手関節を屈曲させるストレッチを行い、上腕骨外側上顆に付着する筋腱成分の柔軟性を確保することで、機械的刺激に対応できる環境づくりを行うことが、長期的な疼痛コントロールに有効です。
疼痛を繰り返している症例では、肘関節の回内運動(前腕は回旋させ、掌を下に向ける運動)が制限されている場合があり、これが疼痛誘発の原因となっている場合もあるため、肘関節の関節可動域を改善させることも有効です。