初めまして。整形外科医.comの管理人および執筆医の北城雅照と申します。
ブログをお読みいただきありがとうございます。ここでは、なぜこのブログを始めたかについて記載いたします。
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健康寿命を伸ばすために
診療の中で、私が常に心がけていることがあります。それは、「目の前の人を健康にする」ということです。
現在私は整形外科医として診療を行っておりますが、整形外科を選んだのも、この健康にしたいと思う気持ちからでした。関節の痛みや骨折などで受診される患者さんも、適切な治療を行えば、その健康ではない状態から改善し、再び健康な元の日常に帰ることができる。そこに喜びを感じ、これまで診療を行ってまいりました。
ある程度経験を積み、多くの患者さんを診察させていただきました。2週間に1度膝の関節内注射に来る患者さん、骨粗鬆症の治療で月に1度診察にいらっしゃる患者さん、その他、運動器に問題を抱える多くの患者さんを診察させていただく中で、ふと、ある疑問が頭の湧いてきました。
それは、「本当に今の自分の医療は、目の前の患者さんを健康にしているのだろうか」ということでした。多くの患者さんを診させていくただく中で、診療が作業になっており、本来の目的であった「目の前の患者さんを健康にする」という目的を見失っていたことに気がついたのです。
この20年間、健康寿命と平均寿命の差は縮まっていない
そんな疑問を感じているとき、ある一つのグラフが目に入りました。そのグラフは以前からよく目にしているグラフでしたが、それまでは特に気にも留めることはなかったものでした。
「過去約20年間で、男女共に健康寿命も平均寿命も伸びている。しかし、その差はこの20年間で縮まっていない。」
「その差この20年間では縮まっていない。」医療者では当たり前のように知っている事実に、衝撃が走りました。
そもそも人が健康であることを望むのは、他の人の手を煩わせず、いつまでも自分のことは自分で選択できるようにありたいと願うからではないか。
であるなら、本当に目の前の患者さんの健康を望むのであれば、この健康寿命と平均寿命の差を縮めることに取り組まなければ意味がないのではないか。
医療技術はこの20年間で非常に進歩したが、この差は縮まっていない。しかしもしかしたら、この後健康寿命が指数関数的に伸び一気にこの差が縮まるかもしれないず、その過渡期にある現在を近視的に見ているだけで差が縮まっていないように感じているだけなのではないか。でも、実際の今自分が提供している医療ではそのような革命的な変化が起きているとは感じられない。
このような疑問を感じる中で、一介の勤務医ではできることに限界があることを感じました。少なくとも自分の目の届く範囲の患者さんの健康寿命と平均寿命の差を縮められるようにしたい、そのようは医療を提供できる場所を作りたい、そのような思いから今回、開業に至った次第です。
一つの医療施設でその地域の健康を守る
日常の診療では、外科的処置まで至る患者さんはそれほど多くはありません。ですので一般的な治療であれば診療所で対応可能です。しかし、整形外科は「外科」である以上、その治療の選択肢として外科的な処置を下さなければならない状況が起こり得ます。クリニックとしてのみ開業してしまうと、この選択肢を他者に委ねることになってしまいます。
よって手術という選択肢を残すために、クリニックと病院が同じ場所に存在する新しい施設の開設を考えました。また、目の前の患者さんを健康にするためには整形外科だけでは不可能です。その他の診療科の力がなければ達成することはできません。そこで、クリニックが集まった医療モールを考えました。医療モール内のクリニックで入院対応が必要な患者さんがいらっしゃれば、併設している病院に入院できる仕組みも整え、1医療施設で地域医療の全てを提供できる体制を整えることができました。
この施設があれば、その地域の方々の健康を守ることができる、そのような医療体制を整えることができたと考えております。
問題の根源は病院の外にある
しかしこの施設があったとしても、本来の目的である「健康寿命と平均寿命の差を縮める」ことができるとは考えておりません。
なぜなら、もし仮にそれが可能だとしたら、現在の医療供給体制でも、例えば大きな市中病院がある地域などでは、この差が縮まっているはずだからです。しかし、実際そのような状況にはなっていません。これには根本的な原因があるからです。それは、現代社会の疾病構造とそれに対する予防法・治療法です。
日本の疾病構造はこの100年間で劇的に変化しました。戦前まで主な死因は感染症でした。戦後は医療の発展や公衆衛生の改善によって感染症は減少し、その後の高度成長期には脳血管障害が問題となりました。その後、降圧剤や救命医療の発達により脳血管障害の救命率が上昇しました。そして現在、医療における主な問題は生活習慣病とがんに変わってきております。
つまり高度成長期までの医療は、「とにかくこの薬を飲みなさい。」が通じた時代でした。しかし、生活習慣病が主な問題となった現代では、医療側が何かを提供するだけでは問題は解決せず、患者さん自らに行動していただく必要があります。特に患者さん自身にこれまでの行動を改めていただく行動変容が必要になります。この行動変容に繋がる何かを提供することが今の医療に求められております。
そして、まだ病院に来てくださる患者さんには何かしらの対応を行うことができるのですが、問題は病院に受診されていない方々にどのように行動変容を促していくかです。この点を解決することができなければ、本当の意味で「健康寿命と平均寿命の差を縮める」を達成することはできません。つまり、問題の根源は病院の中ではなく外にあるのです。
1人の臨床医・整形外科医として、正しいと思う情報を発信し、その情報に責任を持つ
そんな思いから、今自分ができることは何かと考えた時、まずはちょっとした整形外科の疾患に気を向けてくださった方に、顔の見える形で医療情報を提供し、その情報に責任を持つことだと考えました。
そして、少しでも当院に興味を持ってくださった方が受診していただけたら、健康になるために必要なものを当法人総力をあげて提供していきたいと考えております。
また、日々の診療で患者さんから様々な質問・疑問をいただくことがあります。限られた診療時間の中では伝えきれないことが多くあります。それらの質問・疑問などに答える場としても利用したいとも考えております。
例えば、「変形性膝関節症ってどんな病気で、どんな治療法があるの?」といった疑問に対して、診察室ではご説明しきれなかったことを、このブログでご提供していこうと思っております。
昨今、健康に関する知識は世の中に溢れており、一体何が本当の情報か迷ってしまう方が多いように感じます。そして、それらの情報は情報発信者が無責任に発しているものが多く、その情報を聞いた方の不安のみを煽り、その後の処理は全くしないものがほとんどです。
私は、自分の診療した患者さんからいただいた質問や疑問に対して、診察室では答えきれなかった部分をこの場を使い補い、その情報発信に責任を持っていこうと考えております。
北城 雅照